9月6日に小泉進次郎衆院議員が自民党総裁選への
立候補を表明する記者会見を行った。その質疑応答の時間に、産経新聞の記者から
皇位継承問題への考え方について質問された。
これに対して、一見、模範解答で安全運転以外の
何ものでもないような回答があった。総裁選を控えてどの候補者も、
少しでも不利になりそうな発言は、固く封印する判断に
傾いているように見える。ところが、進次郎氏の回答を改めて読むと、
これまでの政府·自民党の見解から逸脱してることに気付いた。
これは、想定問答を用意した時の整理不足、ケアレスミスなのか。
それとも、しっかりとした意図を秘めているのか。先の回答と政府·自民党の見解との食い違いについては、
質問した産経の記者も気付かなかったようだし、
大方に見逃されているようなので、ここで取り上げておく。政府は、国会の附帯決議によって、
安定的な皇位継承について検討せよと求められた。これに対して、政府は先ず、①安定的な皇位継承という課題と、
②皇族数の確保という課題を“区別する”、という悪知恵を
廻らせた。恐らく②は附帯決議にある「女性宮家の創設等」を
すり替えたものだろう。しかもそれらのうち、本来の課題である①については、
「国家の基本に関わる極めて重要な問題」だけど
「慎重かつ丁寧に検討を行う」=先延ばしする、
すり替えた②は「皇族方の御年齢からしても先延ばしすることは
できない重要な課題」=こちらは早めに手を着ける、
というのが政府の基本的なスタンスだ(例えば平成31年3月13日、
参院予算委員会での安倍晋三首相の答弁)。手品のすり替えトリックのやり口を思い出させる。
有識者会議の報告書も、①については「白紙回答」=先延ばしで、
②についてだけ欠陥プランを並べている。
まさに、政府のすり替えトリックに忠実に沿った内容になっている。それを前提に、進次郎氏の回答をチェックすると、
冒頭「皇位継承のことについては、安定的な皇位継承は
先送りできない課題だと思っています」と言い切っている。
その上で、「今、皇族数の確保に向けても、
政府の有権者会議の報告書…」という模範解答が続く。
私も最初はそちらだけを見て、“安全運転”と判断した。
多くの人も、産経記者をはじめ模範解答という印象だけが
残ったはずだ。しかし、先の整理と照らし合わせると、
かなり印象が違って来るのではないか。
これは、政府のスタンスを上手く整理できていない為の
“混乱”なのか。それとも、別の意図があるのか。
それは次第に明らかになるだろう。いずれにしても、進次郎氏は皇位継承問題での
父親の蹉跌を誰よりもよく知っているので、本気であろうと、
本気でなかろうと、このテーマについてはよほど
注意を払いながら対処すると考えられる。なおこれから暫く、衆院選挙本番に突入する手前から、
既にメディアで「選挙近し」との報道が相次ぎ、
進次郎氏が記者会見で総選挙をブチ上げたこともあって、
有権者と政治家の距離がぐっと狭まる期間が続くはずだ。皇位継承の安定化を本気で願う国民は、
そのチャンスを最大限に活かすべきだろう。【高森明勅公式サイト】
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